東京高等裁判所 昭和31年(う)2488号 判決
被告人 盧在述 外一名
〔抄 録〕
一、原判決が証拠に挙げた所論被告人盧在述の各供述調書の任意性乃至信憑力を疑うに足るべき形跡は、記録上これを窺うに由がないところ、これ等各供述調書と原判決挙示のその余の関係証拠とを綜合すれば被告人盧在述は、原判示第一(一)(1)及び(二)(1)記載の如く原審相被告人中幸太郎又は岡田乾電池株式会社の依頼により原審相被告人福田宗一に対し外国製自動車の名称、年式、車台番号等を指定してこれが廃車証明書の入手方を依頼したのであつて、その際仮りに福田宗一の依頼先なる被告人海老坪宏及び原審相被告人成田昭太郎において擅にこれを作成偽造するものであることを知らなかつたとしても、少くとも右廃車証明書はこれが発行の権限を有する神奈川県知事において、その権限に基き適正に発行するものではなく、被告人盧在述の依頼した福田宗一或はその他の者において、廃車証明書作成下付の機械的事務のみを取り扱うに過ぎない神奈川陸運事務所の係員と意思を通じ、同係員をして擅に右知事の署名、印章を冒用して同被告人の指定するとおりの内容の廃車証明書を作成させるものであると認識していたものであることはこれを認めるに十分である(同被告人の認識における右係員の所為は、刑法第百五十六条所定の公務員の虚偽有印公文書作成(いわゆる無形偽造)罪に該当するものではなく、同法第百五十五条第一項所定の有印公文書偽造(いわゆる有形偽造)罪を構成するものであり、このことは右陸運事務所と職務上の関係のない私人が、擅に右廃車証明書を作成偽造する場合と何等異るところはない。)から被告人盧在述は所要の廃車証明書が(有形)偽造されるものであることを認識しながら、敢てこれが作成入手方を右福田宗一に依頼したものに外ならず、従つて、これが偽造入手方の犯意があつたものと言わなければならないことは、原判決の認定判示するとおりである。
二、而して刑法第六十条にいわゆる二人以上共同して犯罪を実行するとは、二人以上の者が、共謀(共同意思の形成)の下に一体となり互に他人の行為を利用して自己の犯意を実現することを言い、その共謀あるがためには必ずしも右数人間において面識あること、及び犯罪に関して直接に謀議した事実あることを要せず、数人中の或る者を通じて順次他の者と相互に共同犯行の意思連絡を遂げるをもつて足りると同時に、右犯意実現の手段においても、必ずしも全員共に手を下して各自が実行行為を分担することを要せず、全員の諒解の下に一部の者をして他の者に代りこれが実行行為を担当させるのをもつて足りるものと解するのを相当とするところ、右証拠によれば被告人盧在述は原判示第一冒頭及び第一(一)(1)並びに(二)(1)記載の如く福田宗一、海老坪宏、浅田昭太郎((一)(1)の事実については、このほか中幸太郎)との間において順次意思を通じた結果、中幸太郎又は被告人盧在述において、その慾する自動車の名称、年式、車体番号等を指定し、全員協力してその指定したとおりの内容の廃車証明書を偽造入手することを意図し、而して、これが偽造の実行行為は右海老坪、浅田両名においてこれを担当すべき旨相互に意思連絡を遂げた上、右両名において右共同意思を実行したものであることを認めることができるから、被告人盧在述の右行為は、前段叙説の趣旨において廃車証明書偽造の犯意をもつて他の者と共謀の上これを実行したものと言わなければならない。
(三宅 河原 遠藤)